よくある質問
耳に関する質問
- 耳のそうじは、どれくらいの頻度ですればいいのでしょうか?
- 耳あか(耳垢)は自然に落ちてくるものですから、耳かきは1~2週間に1回で十分です。耳のあな(外耳道)と鼓膜は皮膚組織に覆われており、表面の皮膚は常に生え変わっています。古い皮膚(これが耳垢です)は脱落して、耳の外へと自然に運ばれていきます。これを自浄作用といいます。綿棒や耳かきを奥まで挿入すると、外に出ようとしている 耳垢を押し込んでしまい逆にとれなくなってしまいます。
また、耳垢には殺菌作用があり耳を守っているため、とりすぎないほうがよいです。
- 耳そうじだけで耳鼻咽喉科を受診してもいいのでしょうか?
- まったく問題ございません。耳垢が気になる、耳が何となくすっきりしない、という症状であっても、単なる耳垢ではなく外耳炎を起こしている場合や、あるいは中耳炎などの合併症が隠れている場合も多くみられます。気になる症状があれば、見えない耳の穴をむやみに触って傷つけるよりも専門医による診察を受けることをお勧めします。
- 子供はなぜ急性中耳炎にかかりやすいのでしょうか?
- 急性中耳炎は、鼻とノドのつなぎ目(鼻咽腔)に付着した細菌が、中耳と鼻咽腔をつなぐ管(耳管)を伝って感染することで発症します。小児では耳管が成人と比較して太く短いため、青洟(あおばな)が続くような細菌感染があるとすぐに急性中耳炎を起こしてしまいます。
また生後6か月から2歳までは一時的に免疫能が低下するため、細菌感染を起こしやくなり、そのぶん急性中耳炎の発症頻度も高くなります。
- 急性中耳炎を何度も繰り返す理由は何でしょうか?
- 主に下記の5点が急性中耳炎反復の原因として知られています。
(1)低年齢での初回感染
生後6ケ月からから12ケ月で急性中耳炎に罹患すると、その後に急性中耳炎を繰り返しやすいことが報告されています。
(2)人工乳栄養
母乳には細菌感染を防御する免疫グロブリンが含まれるため急性中耳炎を予防できますが、人工乳ではその働きがなく急性中耳炎を繰り返しやすいことが報告されています。
(3)薬剤耐性菌の感染
抗生剤に抵抗力を持つ薬剤耐性菌が近年増加傾向にあり、耐性菌が感染すると急性中耳炎を繰り返しやすくなります。
(4)集団保育
免疫力が低下する6ケ月から2歳までの幼児が集団保育の環境にあると、細菌感染を起こしやすくなりさらに薬剤耐性菌の感染頻度が高くなります。
(5)家庭内喫煙
家庭内に喫煙者がいると、小児の気道粘膜が障害されて細菌感染の発症率が高くなります。
- 急性中耳炎の治療で鼓膜切開をしても大丈夫なのでしょうか?
- 急性中耳炎ではまず抗生剤による治療を行いますが、薬剤耐性菌の増加により薬が効かない場合が増えています。鼓膜切開をすると、中耳にたまった膿(うみ)が出されて新鮮な空気がとり入れられるため、悪い細菌が死滅して中耳炎が治ります。鼓膜切開は悪化した中耳炎に対する大切な治療法であり、切開した傷は1週間ほどで治るため問題はありません。
- レーザー鼓膜切開と通常の鼓膜切開はどう違うのでしょうか?
- 鼓膜切開とは急性中耳炎の治療で行う手技で、従来法では専用のメスを使って鼓膜を一文字に切開します。これに対してレーザー鼓膜切開では、炭酸ガスレーザーを使って鼓膜を円周状に切り抜きます。
従来法では切開口が3日以内に自然閉鎖してしまいますが、レーザー鼓膜切開法では1週間以上開きつづけるため、中耳の膿が排出されやすく炎症がより確実に治まります。このことは中耳炎の再発予防にもつながります。
またメスを使わないため、耳小骨などの大事な器官を傷つける危険性がありません。レーザー切開のサイズは0.2mm刻みで設定できるので、0歳児の小さな鼓膜でも安全に対応できます。
当院ではレーザー鼓膜切開装置「OtoLAM」を導入しており、安全かつ確実な急性中耳炎の治療を目指しています。
なお従来法でもレーザー鼓膜切開法でも社会保険診療報酬点数は変わりませんので、経済的負担金額は同一です。
- 補聴器をつけると難聴が進行しますか?
- 補聴器をつけて難聴が進行することはありません。しかし音響特性が合わない補聴器、例えば他人の補聴器などを装着して大きすぎる音を耳に入れてしまうと、聴力を障害する危険があり注意が必要です。補聴器は必ず専門的な調整が必要であり、まずは耳鼻咽喉科で補聴器の適応があるか、他に耳の病気が隠れていないか、診察を受けることをお勧めします。
鼻に関する質問
- 鼻血が出た場合の対処を教えてください。
- ご家庭で鼻血が出た場合、まず下記の止血処置を行ってください。
(1)椅子に座って顔だけ下を向く
(2)鼻の一番膨らんでいる部分(小鼻)を、親指と人差し指で両側から挟んでつまむ
(3)そのまま10分以上つまんで圧迫を続け、安静を保つ。
特にやってはいけないことは、「上を向いておくこと」「あお向けに寝ること」です。これをすると、出血自体が止まらないばかりか、血液がのどの奥に流れ、飲み込んでしまい、場合によっては後で大量の血を嘔吐することがあります。また「鼻を強く嚊んで鼻血を出し切ろうとする」行為も大変危険ですのでおやめください。
長時間の入浴、刺激物摂取、アルコール、喫煙は鼻血を誘発しますので避けるように気を付けてください。
以上の手技を行っても鼻血が止まらない場合は、直ちに耳鼻咽喉科を受診するようにしてください。
- 鼻水はかんで出した方がいいのか、あるいはすすった方がよいのか?
- 鼻水が出るときは、是非ティッシュでかむようになさってください。鼻すすりには多くの問題があり避けるべきです。一番の問題は、鼻をすすることで鼻水が耳管(鼻と耳をつなぐ管)に入りやすくなり、急性中耳炎の原因となりやすいことです。また鼻すすりにより中耳が陰圧となることで、耳閉感が出現したり滲出性中耳炎が発症したりする可能性があります。
- 風邪とアレルギー性鼻炎の違いは?
- アレルギー性鼻炎は「くしゃみ、鼻水、鼻づまり」が3大症状ですが、その他に「頭痛、のどの痛み、微熱、せき」も起こしやすくなります。これらはすべて風邪症候群と同じ症状であり症状だけで区別することはできません。一番の目安は「症状の持続期間」です。1週間以上、いわゆる風邪症状が続く場合は、アレルギー性鼻炎や他の疾患を疑います。また眼のかゆみがある場合もアレルギー性鼻炎を疑います。
- 鼻が悪くて頭痛が起きることがありますか?
- 頭痛は私達が日常生活で多く経験する症状であり、脳神経外科や神経内科で原因を調べることが多いです。一方、鼻の病気で頭痛が起きることも知っておく必要があります。代表的なものでは慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)があり、頭蓋骨内の空洞である副鼻腔に膿がたまったりして頭痛がおこります。また最近ではアレルギー性鼻炎にともなう頭痛が増加傾向にあり、鼻粘膜が腫れて副鼻腔の換気障害で陰圧がかかることで頭痛が起こります。特に小児のアレルギー性鼻炎では、鼻症状ではなく頭痛を先に訴える場合があります。
- なぜ「スギ」が花粉症の原因として重要なのでしょうか?
- 花粉症は花粉が鼻や眼の粘膜に付着して起こるアレルギー反応です。古くは1819年に「夏かぜ」と報告された病気ですが、農民が枯草に近づくと発症するので「枯草熱」と呼ばれていました。その後、枯草中の花粉の吸入によるアレルギーと判明しました。
花粉症を起こすためには、花粉を産生する植物が多数繁殖し、空中に多量の花粉を飛ばし、花粉に含まれるアレルギーの原因物質(アレルゲン)が水溶性で溶けやすいことが条件となります。花粉症を起こす植物は原則として風媒花です。ちなみにマツは春に花粉を多数飛散させますが、花粉からアレルゲンが溶けにくい性質を持つため、花粉症を起こしにくいのです。
日本では、春は樹木花粉(スギ、ヒノキなど)、夏はイネ科草花粉(カモガヤ、オオアワガエリなど)、秋は雑草花粉(ブタクサ、ヨモギなど)が花粉症を起こします。特に樹木は草木よりも遠くまで花粉を飛散させ問題となります。日本固有種であるスギは、戦後北海道・沖縄以外の全国で植林され、1970年代に入り花粉生産能力の高い樹齢30年以上のスギ林面積が多くなったため、スギ花粉症が急増したと推測されています。
- スギ花粉症はどうやって防げばいいのでしょうか?
- まずスギ花粉の吸入を回避することが必要です。晴天の日中外出時にはマスクやメガネで防御します。花粉が付着しやすい毛織物などのコート着用は控え、帰宅時に衣服や髪をよく払ってから入室します。その後洗顔・うがい・鼻かみをしっかり行ってください。
薬物療法では初期療法をお勧めします。花粉飛散予測日から抗ロイコトリエン薬または第2世代抗ヒスタミン薬を内服する予防的治療であり、症状がひどくなってから治療開始すると薬剤の治療効果が出にくいのに対して、初期療法を行っていれば症状が出ないか、出ても軽症で済むことがわかっています。
毎年強い症状を繰り返す場合、外来手術療法の適応もあります。鼻粘膜をレーザーにて蒸散してアレルギー反応を抑える「下甲介粘膜レーザー焼灼術」という手術方法であり、社会保険診療報酬で規定された保険診療です。効果持続期間は1~2年と一時的な治療ですが、効果がある場合は反復して治療を行うことができます。
のどに関する質問
- 耳鼻咽喉科で扱う「ノド」とはどの範囲ですか?
- 一言で「ノド」といっても、解剖学的には多くの部位に分けられます。耳鼻咽喉科が専門とする領域は下記の通りです。「ノド」の病気を正しく診断するためには、これらのどの部位に原因があるかを詳細に診察して判断する必要があります。
(1)上咽頭
鼻と咽頭部のつなぎ目にあたる部位、「ノドの上側」と表現されることが多いです。
(2)口腔
舌や歯ぐきを含みます。
(3)中咽頭
口蓋扁桃、「のどちんこ」と呼ばれる口蓋垂、舌の付け根の筋肉である舌根部が含まれます。
(4)喉頭
声を出す器官で空気の通り道です。発声にかかわる声帯を含みます。
(5)下咽頭
喉頭の裏面にある食物の通り道で、食道と咽頭部をつなぐ器官です。
(6)唾液腺
唾液を産生する耳下腺(おたふくかぜで腫れる部位)、顎下腺、舌下腺が含まれます。
(7)頸部
咽頭・喉頭を取り囲む筋肉や血管、またホルモンを産生する甲状腺が含まれます。
- ノドの違和感があるとき、どのような検査を行いますか?
- まずは問診で「どんな違和感があるか」「いつからか」「痛みや出血の有無」などを詳しくお伺いします。違和感が1週間以内であれば急性扁桃炎などの炎症性疾患が第一に考えられます。しかし症状が2週間以上続いていれば、他の病気や腫瘍性病変の有無を疑う必要があります。
詳細な診察を行うためには咽喉頭内視鏡検査が必要ですが、当院では分光内視鏡技術「FICE」を備えた電子内視鏡システムを使用しています。FICEによる観察は小さな癌を見つけやすくするので、癌の早期発見につながります。
また頚部のしこりが原因として疑われる場合、頸部エコー装置による診察を行います。エコー検査で異常が疑われる場合、マルチスライスCTスキャン装置による画像診断を行います。当院では院内にCTを完備していますので迅速な検査が可能です。
その他の質問
- 風邪症状は耳鼻咽喉科で診察できますか?
- 風邪症状は耳鼻咽喉科の専門分野です。耳鼻咽喉科は鼻やノドなどの上気道を専門とした診療科であり、風邪症状は耳鼻咽喉科が最も得意とするところです。
いわゆる風邪は風邪症候群といってウィルス感染が原因であり、インフルエンザウィルス感染症も含まれます。当院ではインフルエンザウィルスの迅速診断装置を導入しており、従来法と比較してより早期の診断が可能です。
風邪症状が出現してお困りの場合、まずは耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。
- おたふく風邪(流行性耳下腺炎)の診察は耳鼻咽喉科でも可能ですか?
- もちろん可能です。おたふく風邪は、ムンプスウィルスが耳下腺(唾液を作る器官)に感染して発症する病気であり、耳鼻咽喉科が専門とする頭頸部領域に含まれます。おたふくかぜと間違いやすい病気に、化膿性耳下腺炎があります。これはウィルスではなく細菌感染で起こる耳下腺炎であり抗生剤による治療が必要となります。化膿性耳下腺炎は小児で繰り返すことが多く、その場合は反復性耳下腺と呼ばれることもあります。繰り返す原因として、慢性副鼻腔炎や慢性扁桃炎などが隠れている場合があり、耳鼻咽喉科領域の詳しい診察で明らかとなります。