めまい(めまい相談医による専門診療)
当院では日本めまい平衡医学会認定のめまい相談医として、学会で推奨されるガイドラインに従った標準的かつ論理的なめまい診療を行っています。
さらに当院には学会主催の平衡機能検査技術講習会を修了した臨床検査技師が在籍しており、認定された技術で平衡機能検査をサポートいたします。
めまい相談医とはどのような資格でしょうか?
日本めまい平衡医学会は、めまい疾患の診断と治療の発展、さらに一般社会へのめまい疾患の啓蒙を目的として設立された学会です。この学会が認定するものに「めまい相談医」制度があり、めまい診療について専門的知識と高度の診療技術を持つ医師が「めまい相談医」に認定されます。
この資格を認定されるためには、学会主催の医師講習会を受講し所定の試験に合格する必要があり、さらに受験条件として「a)臨床経験が6年を超えている、b)本会の正会員歴が3年を超えている、c)基本領域学会の専門医または認定医資格を有する。」の3項目をすべて満たす必要があります。
当院では、2016年10月に院長が「めまい相談医」の資格を取得しています(第545号)。学会から認定されためまい診療の専門家として、同じく学会研修修了資格を持つ臨床検査技師と共に、地域におけるめまい診療の更なる向上を目指して日々研鑽を重ねております。
2019年10月現在で全国のめまい相談医は645名、そのうち鹿児島県内のめまい相談医は6名です。
めまい相談医の一覧は、日本めまい平衡医学学会の公式サイト内に記載されています。
日本めまい平衡医学会公式サイトはこちら。
めまいとはどのようなものでしょうか?
めまいの定義は、「安静にしている時あるいは運動中に、自分自身の体と周囲の空間との相互関係・位置関係が乱れていると感じ、不快感を伴ったときに生じる症状」とされています。
つまり、周囲が動いていないのに「動いている」という違和感がめまい症状につながります。
めまい自体は頭痛と同様にありふれたもので、日常生活の中でも体験する事が多い症状です。健康な方でも、「地震かな」と勘違いしたことがあるかと思います。
具体的な症状は、大きく下記の2種類に分類されます。
めまいの症状
- 自分が回っているように感じたり、周囲の景色がぐるぐる回っているように感じる「回転性のめまい」
- 体がふわふわ揺れ動いて足が地につかないような浮遊感を感じる「非回転性のめまい」
めまいの原因とは?
私達の体のバランスは、平衡感覚をつかさどる様々な器官からの情報が脳へ伝達されることで保たれています。具体的には、内耳の三半規管や耳石器からの信号、目からの視覚情報、手足、首などの筋肉や関節からの知覚情報、脊椎の深部知覚情報などです。
めまいは、これら器官のいずれかに障害が発生することで起こります。
例えば病気で内耳の調子が悪くなると、実際の動きや姿勢とは異なる情報が内耳から発信されます。その誤った情報は、現実の運動で生じるものとは異なり、ほかの視覚や筋肉や関節などの体の感覚とうまく一致しません。このような複数の感覚情報のずれがめまいとなります。
そのため内耳の病気だけでなく、視覚、首や腰の異常、またそれらの情報入力を統合する脳の病気でもめまいを感じます。このように、めまいの原因には様々な病気が考えられるので、しっかりとした検査を行い原因精査を行う必要があります。
めまいの原因となる病気
- 内耳性めまい(内耳の三半規管や耳石器、前庭神経の異常)
- 中枢性めまい(大脳、小脳、脳幹部の異常、脳血流の循環不全)
- 頚性めまい(脊柱管狭窄症など脊椎の異常)
- 起立性調節障害(貧血や自律神経失調による起立時の血圧低下)
- 加齢性めまい(老化現象に伴う異常)
- 心因性めまい(ストレス、うつ病)
めまいの診断方法は?
めまいの原因が内耳になるのか、あるいは脳にあるのかによって、その治療法は大きく異なります。これらをしっかりと診断するために、当院では下記の検査を行っています。
重心動揺計検査
グラビコーダ GP-31という装置を用いて体のバランスを検査します。
三角形のプレート上に起立して、開眼時と閉眼時の身体のバランスの違いを測定することで、脳の障害か、あるいは内耳障害があるかどうか調べます。
日本めまい平衡医学会でも認められた国内唯一の日本全国2,200人の健常値データを内蔵した解析装置です。
さらにGP-31では、ラバー負荷検査という新しい機能が追加されています。これはゴムマットに乗って体のバランスを測定することで、脊椎の深部知覚情報を抑制し、内耳障害をより詳しく診断する検査です。ラバー負荷検査では内耳障害(前庭機能異常)を80%以上の感度で抽出出来ることが報告されています。
聴力検査
オージオメーターAA-79による聴力検査を行います。
めまいの原因として有名な病気にメニエール病があります。
内耳障害によりめまいが起こる病気ですが、めまいだけでなく難聴や耳鳴など聴力障害(蝸牛症状)を合併することが特徴です。そのため聴力検査をせずにメニエール病と診断することは困難であり、めまいの精密検査では聴力検査が重要となります。
ビデオ式眼振計測装置(VOG)
内耳障害によるめまい発作が起きた場合、眼球が異常に動く「眼振」が出現します。この眼振の向きや出現パターンを解析することで、内耳のどこに原因があるのか詳しい部位診断をすることができます。
めまいの診断において眼振検査は古くから必須の検査法ですが、わずかな眼振を見逃さないための診断装置が重要となります。
当院ではビデオ式眼振計測装置(VOG)を導入して眼振を記録・解析しています。
VOGは赤外線カメラを内蔵したゴーグルを装着することで、眼球の動きをビデオ録画しながらコンピューター解析して、眼振図という波形を表示する機器です。
内科の医師は心電図をみて心臓に異常がないか診断しますが、私達めまい相談医は眼振図を用いてめまいの診断を行っています。
正しいめまいの診断を行う上でなくてはならないVOG、当院では2013年から導入して活用しています。
頭振刺激眼振計測装置(vHIT)
内耳障害によるめまいの中で、特に激しいめまい発作と吐き気を伴う疾患として有名な前庭神経炎という病気があります。
前庭神経は、第8脳神経(聴神経)の一部であり、内耳の平衡感覚をつかさどる器官(三半規管、耳石器)と脳をつなぐ神経です。
この神経がウイルス感染などで障害されると、三半規管からの情報が脳へ伝えられず、めまい発作が引き起こされます。
「三半規管‐前庭神経‐脳」という経路がうまく働いているか調べる方法として、「前庭眼反射」を調べるものがあります。ある一点を注視した状態で、頭を急速に回転させて急に停止させると、視線を固定し続けるためには前庭眼反射の働きが必要となります。ところが前庭神経炎の場合、前庭眼反射が低下しているため視線を固定することができず、いったん視線がずれてしまい、その後に脳の働きで視線が注視点に戻ります。
頭振刺激眼振計測装置(vHIT)は高速ビデオカメラを用いて眼球の動きを記録し、解析用PCで前庭眼反射を測定して数値化する機器です。
vHITにより三半規管の障害、前庭神経の障害を定量化して評価することが可能となり、前庭神経炎など激しいめまいを早期に診断して適切な治療を開始することができます。
当院では2019年からvHITを導入しており、めまい診療において高い有効性があることを認めております。
全身型マルチスライスCT検査
重心動揺計検査の結果で脳の障害が疑われる場合、院内にて頭部CT検査を行います。
撮影した画像はオンラインで遠隔画像診断センターへ転送され、放射線科医による画像診断が行われます。
当院ではネットメディカルセンターと遠隔画像診断契約をしており迅速な画像診断が可能です。
平衡機能検査技術講習会とは?
日本めまい平衡医学会が主催する、めまい検査に関する技術講習会です。
めまい検査にはたくさんの種類があり、すべての検査を医師一人で行おうとすると多くの時間と労力を費やすることになります。そのため、臨床検査技師あるいは看護師による検査補助が学会でも推奨されています。
しかしめまい検査を実践するためには、めまいに関する基本的な知識と正しい検査方法を身につける必要があります。そのために開催されているのがこの技術講習会です。講習は5日間で、基礎的講義から始まり、実践に即した技術講習に至るまでの濃厚なカリキュラムとなっています。
めまい診療の質的向上および検査時間の短縮と合理化を目的として、当院にはこの講習過程をすべて修了し所定の試験に合格した臨床検査技師が在籍しており、めまい検査に関する技術的サポートを行っています。
このように医師・看護師が一体となった、チーム医療によるめまい診療を当院では目指しております。