院内の設備
ふくいわ耳鼻咽喉科クリニックの院内設備、医療機器に関するご案内です。当院ではGE社製マルチスライスCTを導入して頭頸部・胸部の精密検査を行います。この設備は耳鼻咽喉科クリニックとしては全国でも稀で、当院自慢の設備です。
電子カルテ | 重心動揺計 | 聴力検査室
ビデオ式眼振計測装置(VOG) | 頭振刺激眼振計測装置(vHIT)
インフルエンザウィルス分析装置 | 新型コロナウイルス遺伝子検査装置
16列マルチスライスCT「Aquilion Start」
頭頸部の画像診断を行うためにはCT検査が必要です。 当院では2008年の開業時に、全身用マルチスライスCT「New ProSpeed II Eco Version」(GE横河メディカル社製)を導入しておりました。
そして2019年には更なる検査品質向上のため、新たに16列マルチスライスCT「Aquilion Start」(キヤノン製)を導入しました。
当院のCTは院内LANを利用して、電子カルテシステムの一部である画像ファイリングシステムと接続されています。そのため撮影が終わると 自動で院内サーバーへ画像が転送され、瞬時に診察室PCで画像を表示することが可能です。
そしてこの画像は医師診察用モニタに表示されるだけでなく、患者様専用の液晶モニタにも表示されますので、御自分の検査内容を十分にご確認いただけるよう配慮されています。
また、頭頸部以外の撮影、例えば胸部や頭蓋内などにつきましても十分対応しております。
さらにこれらの当院専門外領域については、株式会社ネットメディカルセンターの遠隔画像診断システムを用いて 放射線科医による画像診断を行っています。
撮影画像は専用回線でセンターへ転送され放射線科医の読影が行われるため、スピーディに信頼性の高い読影レポートを得ることが出来ます。
なお、この遠隔画像診断システムは当院が患者様サービスの一環として行っているものであり、読影にかかる費用はすべて当院が負担しますので患者様への余分な費用負担はありません。
ふくいわ耳鼻咽喉科クリニックでは、マルチスライスCTと遠隔画像診断システムで信頼性の高い検査を提供いたします。
関連リンク
- 株式会社ネットメディカルセンター
フジノン電子内視鏡「FICE」 Electronic Endoscope
頭頸部がんの代表的なものに喉頭がん・下咽頭がんがあります。喉頭と下咽頭はどちらも「のど」の奥深いところにある臓器で、詳細に喉頭・下咽頭を観察するために 以前は「喉頭ファイバースコープ」という検査器具が使用されていました。これは、光ファイバーを束にして先端にレンズをつけたもので、1970年代から臨床応用されていました。
1990年代には超小型撮像素子(CCD)をスコープ先端に配置したビデオスコープ(電子内視鏡)が開発されファイバースコープから世代交代されています。 一般的に電子内視鏡の解像度はファイバースコープの10倍以上と言われ、より精細な検査が可能となりました。鼻から入れて観察するので苦痛のない検査が出来ます。 電子内視鏡は咽喉頭がんの早期診断において既に必須の機器となっています。
そして電子内視鏡の更なる進化形、それが 分光内視鏡・FICEです。 フジノンが開発した内視鏡画像診断支援機能 FICEは世界で初めて「分光推定技術」を応用した新しい内視鏡システムです。
電子内視鏡は、キセノンランプの白色光で生体表面を照らし、その反射光をCCDがとらえてモニターに映し出します。FICE処理では、光の波長を分解して得られた画像を再合成することで、粘膜下の血管を強調し微小病変(早期がん)を発見しやすくするものです。
なぜ血管を強調するかというと、がんは増殖する時に血管を作りだし血液から酸素を利用する、という特徴があるためです(がん増殖と血管新生)。ちなみに「頭頸部がんの増殖に血管新生が重要である」ということは、アメリカ癌学会会誌 CANCERに当院院長が発表しています(CANCER、1999年)。
既に消化器・気管支領域では実績のあるものですが、耳鼻咽喉科領域では2008年5月から販売開始されました。当院では2008年11月の開院時からFICEを導入しており、これは全国で5台目、九州で最初に納入されたシステムです。
ふくいわ耳鼻咽喉科クリニックでは、分光内視鏡FICEを用いて頭頸部がんの早期発見を目指します。
関連リンク
アルゴンプラズマ凝固装置 Argon Plasma Coagulation
アレルギー性鼻炎・花粉症の手術療法として、アルゴンプラズマ凝固装置(APC300)を導入しました。
アレルギー性鼻炎に対する手術療法の概要
アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)は、ハウスダストやスギ花粉などアレルギーの原因となる物質(アレルゲン)が鼻粘膜に付着して免疫応答(アレルギー反応)を起こすことで、くしゃみ・鼻漏(鼻水)・鼻閉(鼻詰まり)などの症状が出ます。
通常おこなわれている薬(抗アレルギー剤、点鼻ステロイドなど)の治療は、症状を抑えることはできても根本的な治療にはならず、症状がある間は薬を使い続ける必要があります。また薬の副作用で眠気や倦怠感が出る場合もあります。
アレルギー性鼻炎に対する手術治療も、免疫応答をなくすものではないため、根本的な治療ではありません。しかし安全性の高い日帰り手術であり、 治療が奏功すれば薬を飲まずにアレルギー鼻炎の症状を抑えることが出来るため、「鼻アレルギー診療ガイドライン2009年度版」でも有効な治療法として認められています。
手術治療の原理
アレルギー性鼻炎に対する手術療法は、「鼻粘膜を焼いて変性・縮小させることでアレルギー反応が起こらないようにする」という原理に基づいています。 一度焼かれた鼻粘膜は免疫応答に関与する肥満細胞が減少し、また鼻汁に関係する粘液腺細胞も減少しているため、アレルゲンが鼻に侵入してもアレルギー反応が起きなくなります。
ただ体内に免疫応答がある限り、アレルギー反応を起こす粘膜は徐々に再生してきます。これは個人差がありますが6ヶ月から2年を要するといわれています。
粘膜を焼灼する方法はいくつかあり、(1)高周波電気メス、(2)炭酸ガスレーザー、(3)アルゴンプラズマ凝固装置等が挙げられます。いずれも繰り返し治療が可能です。
アルゴンプラズマ療法の原理
アルゴンプラズマ凝固装置は、噴出するアルゴンガスに電流を流すことでプラズマビームを放出します。もともと肝臓や食道にできた腫瘍を焼灼するために開発された装置で、強い止血効果を有しています。
焼けた粘膜はタンパク変性して凝固するため、ビーム到達深度は0.3mm以内でそれ以上深い組織を焼くことはありません。さらにビームは正常粘膜へ引かれる特性を持つため、周囲へ拡散して幅広く均一の深さで粘膜を焼いていきます。2000年からアレルギー性鼻炎への臨床応用が開始されています。
アルゴンプラズマ療法と他の治療法との比較
高周波電気メスによる治療は粘膜への深達度が深いため、「焼きすぎ」による出血・痛みが出現しやすいという欠点があります。
一方炭酸ガスレーザー、アルゴンプラズマ凝固はどちらも表面のみを焼くので安全性が高く疼痛もほとんどありません。 さらにアルゴンプラズマ凝固は一度に広範囲を均一に焼けるので、一度に一点しか焼けないレーザーよりも手術時間が短くてすみます(一側3~5分)。さらにレーザーは一点に当て続けると深達度が深くなり 「焼きすぎ」が発生します。
以上の理由より、当院ではアルゴンプラズマ凝固装置を導入することとしました。
アルゴンプラズマ療法の適応
鼻内処置に耐えられる年齢(目安として小学高学年以上)から成人までで下記に該当される方が対象となります。なおペースメーカーを埋め込んでいる方は治療できません。 また花粉症の方は花粉飛散時期(スギ花粉症の場合2月から4月)には治療ができません。ご注意ください。
- 薬を服用しているが症状が改善しない方
- 薬を長く飲みたくない方、薬にかかる費用を軽減したい方
- 妊娠を考えている方、および妊婦(妊娠中は抗アレルギー剤を飲むことができないため)
アルゴンプラズマ治療までの流れ
- 麻酔液を含んだガーゼを鼻内に挿入します。30分ほどお待ちいただきます。
- ガーゼを抜きます。腕に電極シートを添付します。
- 手術用内視鏡を用いてアルゴンプラズマ焼灼を行います。片側3~5分で終了します。
- 治療後は30分ほど待合室でお待ちいただき、術後出血などがないか確認します。
以上が手術当日の大まかな流れです。術後1週間は鼻内に痂皮(かさぶた)がつくので一時的に鼻詰まりが強くなります。おおむね術後3週間で傷は治癒します。 この間は適宜通院をしていただきます。その1ヵ月後に治療効果判定を行います。
アルゴンプラズマ治療にかかる費用
当院では炭酸ガスレーザー療法とアルゴンプラズマ療法を組み合わせた併用療法を行っています。治療は全て保険適応となりますので、社会保険診療報酬で規定された点数通りの費用となります。ただし具体的な点数は2年ごとの診療報酬改定により変動がありますので、各年度によって異なりますことを御了承ください。
ふくいわ耳鼻咽喉科クリニックでは、アルゴンプラズマ療法でアレルギー性鼻炎・花粉症に対する日帰り手術を行います。
関連リンク
電子カルテ Electronic medical chart
当院では電子カルテ「ダイナミクス」を導入しています。ダイナミクスは吉原内科クリニック の吉原正彦先生が実地診療の現場から開発されている電子カルテ・レセプトシステムです。
私は医学部の学生時代に「医療情報研究会」というサークルに所属して以来、医療におけるPCの重要性を常に認識してきました。また勤務医時代には複数の電子カルテを使用してきました。 その中で、吉原正彦先生の作られたダイナミクスをはじめて知ったときには衝撃が走りました。
医師の視点から作成されたこの電子カルテシステムは、診療業務をスムースにすることで診察待ち時間を減らし、さらに診断の手助けとなるデータを的確に運んでくれる、まさに 「医師と患者さんのための」理想的なシステムだといえます。
ダイナミクス東京例会に参加して吉原正彦先生の医療情報に対する熱い思いを直接御伺いして、即座に当院での導入を決定させていただきました。
また、画像ファイリングシステムとして「RS_base」を導入しています。RS_baseはダイナミクスユーザーの1人でもあるリバーサイド内科クリニックの山下郡司先生が開発されたシステムで、あらゆる患者情報を電子的にファイリングすることができます。
ふくいわ耳鼻咽喉科クリニックは電子カルテ「ダイナミクス」を導入することで医療の質的向上を目指します。
「IT Medical」2009年3月号に掲載されました。
当院の電子カルテシステム導入に関する記事が(株)メディカルアイ発行の医学情報雑誌「IT Medical」2009年3月号 に掲載されました。
タイトルは「Key personに訊く!クリニック開業のイロハ ふくいわ耳鼻咽喉科クリニック院長 福岩達哉」というもので、クリニック設計におけるLAN構築の重要性からはじまり、 電子カルテ選択の過程、「ダイナミクス」の導入経験と実際に運用してみての利点などを中心とした内容です。
新規開業から積極的に院内IT整備に取り組んできたことが、こうして全国に紹介されたのは喜ばしい限りです。これからもさまざまな分野において、加世田から全国へ情報発信を続けていきたいと思います。
関連リンク
重心動揺計「グラビコーダ GP-31」
めまいやふらつきなどの平衡障害が疑われるときに、体のバランスを調べる装置です。
三角形のプレート上に起立して、開眼時と閉眼時の身体のバランスの違いを測定することで、脳の障害か、あるいは内耳障害があるかどうか調べます。
日本めまい平衡医学会でも認められた国内唯一の日本全国2,200人の健常値データを内蔵した解析装置です。
さらにGP-31では、ラバー負荷検査という新しい機能が追加されています。これはゴムマットに乗って体のバランスを測定することで、脊椎の深部知覚情報を抑制し、内耳障害をより詳しく診断する検査です。ラバー負荷検査では内耳障害(前庭機能異常)を80%以上の感度で抽出出来ることが報告されています。
下記の病気を調べるときに使用します。
- 迷路性めまい・平衡障害、メニエール病、めまいを伴う突発性難聴、前庭神経炎
- 中枢性めまい・平衡障害、脳血管障害、脊髄小脳変性症、パーキンソン病
- 血圧異常によるめまい・平衡障害
- 頚性めまい・平衡障害
- 心因性めまい・自律神経失調症によるめまい・平衡障害
聴力検査室
耳鼻咽喉科の診療では必要不可欠な検査が聴力検査です。
厳重な防音規格をクリアした防音室で検査をする必要があり、電話ボックス型の小規模なものから、複数名が入室して様々な検査が可能な大型個室タイプまで、検査室の大きさは多種多様です。
当院では閉所恐怖症の方でも安心して検査が出来るように、大型個室タイプを導入しています。
オージオメーター(測定機器)はリオン社製のAA-79を使用しています。
ビデオ式眼振計測装置(VOG)
内耳障害によるめまい発作が起きた場合、眼球が異常に動く「眼振」が出現します。この眼振の向きや出現パターンを解析することで、内耳のどこに原因があるのか詳しい部位診断をすることができます。
めまいの診断において眼振検査は古くから必須の検査法ですが、わずかな眼振を見逃さないための診断装置が重要となります。
当院ではビデオ式眼振計測装置(VOG)を導入して眼振を記録・解析しています。
VOGは赤外線カメラを内蔵したゴーグルを装着することで、眼球の動きをビデオ録画しながらコンピューター解析して、眼振図という波形を表示する機器です。
内科の医師は心電図をみて心臓に異常がないか診断しますが、私達めまい相談医は眼振図を用いてめまいの診断を行っています。
正しいめまいの診断を行う上で重要な役割を果たすVOG、当院では2013年から導入して活用しています。
頭振刺激眼振計測装置(vHIT)
内耳障害によるめまいの中で、特に激しいめまい発作と吐き気を伴う疾患として有名な前庭神経炎という病気があります。
前庭神経は、第8脳神経(聴神経)の一部であり、内耳の平衡感覚をつかさどる器官(三半規管、耳石器)と脳をつなぐ神経です。
この神経がウイルス感染などで障害されると、三半規管からの情報が脳へ伝えられず、めまい発作が引き起こされます。
「三半規管‐前庭神経‐脳」という経路がうまく働いているか調べる方法として、「前庭眼反射」を調べるものがあります。
ある一点を注視した状態で、頭を急速に回転させて急に停止させると、視線を固定し続けるためには前庭眼反射の働きが必要となります。
ところが前庭神経炎の場合、前庭眼反射が低下しているため視線を固定することができず、いったん視線がずれてしまい、その後に脳の働きで視線が注視点に戻ります。
頭振刺激眼振計測装置(vHIT)は高速ビデオカメラを用いて眼球の動きを記録し、解析用PCで前庭眼反射を測定して数値化する機器です。
vHITにより三半規管の障害、前庭神経の障害を定量化して評価することが可能となり、前庭神経炎など激しいめまいを早期に診断して適切な治療を開始することができます。
当院では2019年からvHITを導入しており、めまい診療において高い有効性があることを認めております。
インフルエンザウィルス分析装置「IMMUNO AG1」
当院では、インフルエンザウィルス感染症を早期発見するために、高感度ウィルス検出装置を導入しています。
富士ドライケム社製のウィルス分析装置「IMMUNO AG1」です。
インフルエンザの発症初期はウィルス量が少ないため、従来の迅速診断キットでは正しく診断することができず、熱が出ても半日以上は検査せずに待つ必要がありました。
当院で導入したIMMUNO AG1は、写真現像技術の応用で検査試薬が約100倍に増幅されるため、高感度検査を実現しています。高感度化されたことで、従来の迅速診断キット法との比較試験では、検出感度が約16倍も向上したと報告されています。
さらに、熱発して6時間以内の感染初期における検査感度も飛躍的に改善しており、「まだ熱が出たばかりなので検査するには早すぎます」という問題の打開策にもなり得ると思われます。
耳鼻咽喉科は「鼻やノドの粘膜変化から病気を探り出す」という診断能力を専門としています。そのため、風邪やインフルエンザなどの「上気道感染症」は最も得意とする分野です。
当院では「上気道粘膜の微細な変化を診断する」医療技術に加えて、最新の高感度検査装置を併用することで、インフルエンザ感染の早期診断と重症化の防止を目指します。
(関連リンク)
新型コロナウイルス遺伝子検査機器「ID NOW」
当院では新型コロナウイルス感染症を診断するための「発熱外来」を行う「診療・検査医療機関」の指定を受けており、コロナ禍における感染対策に取り組んでおります。
新型コロナウイルス感染症を早期に診断するため、ウイルス遺伝子検査機器「ID NOW」を導入しております。
米国アボット社の検査装置であり、新型コロナウイルス感染症のウイルス遺伝子検査が13分で測定可能という利点があります。
ウイルス遺伝子検査とは、いわゆるPCR検査と同等の検査であり、ID NOWは厚労省によって認可された機器です。保険請求上も同一検査として扱われます。
測定する検体は鼻咽腔ぬぐい液を使用する必要があり、唾液での測定には対応しておりません。鼻咽腔ぬぐい液は耳鼻咽喉科専門医が最も得意とする採取法ですので、安全かつスムーズに検体採取することができます。
熱発を伴う症状で受診される際は、来院前にまずお電話でお問い合わせください。症状により当院発熱外来での診察を行う可能性があります。
その際には自家用車内で待機していただき、ドライブスルー方式でウイルス遺伝子検査を行います。検査が陰性となった方で、さらに耳鼻咽喉科領域での精密検査を必要とする場合(電子内視鏡検査、採血、全身CT検査など)、感染対策の整った院内で引き続き診療を行います。
(関連リンク)
無症状の方に対するPCR検査
無症状の方に関しては、南さつま市が実施している「新型コロナウイルス感染症に係るPCR検査実施費用の助成制度」をご利用いただくことが可能です。
対象となる方は「検査日に南さつま市内に住所を有し、感染の不安があってPCR検査を希望する方」です。
ご希望される場合、まず当院までお電話ください。電話問診にて検査適応を確認後、PCR検査の予約を行います。その後、南さつま市役所にて「南さつま市新型コロナウイルス感染症PCR検査受診券」をお受け取り下さい。PCR検査の際にはこの受診券が必要となりますのでご持参ください。
上記へ該当しない方(無症状で検査希望だが受診券のない方)に関しては、自費でのPCR検査は行っておりません。予めご了承ください。
詳細は下記リンクをご覧ください。
(関連リンク)
PCR検査という名称について
一般的に使用されている「PCR検査」という用語ですが、正確には「新型コロナウイルスに対する核酸増幅検査(Nucleic Acid Amplification Tests; NAATs)」のことです。いわゆるPCRとは、核酸増幅検査の中の一つの方法(RT-PCR法)を指します。
今回当院で導入したID NOWも厚生労働省に正式認可された核酸増幅検査ですが、増幅方法はPCR法とは異なる新しい方法(NEAR法)です。
診療報酬上はRT-PCR法もNEAR法も同一の核酸増幅検査という取り扱いであるため、便宜上「PCR検査」と呼称する場合があります。
なおNEAR法による核酸増幅検査(ID NOW)は、前述の南さつま市PCR検査助成制度の対象となります(当院から南さつま市役所へ確認済)。
これら検査用語に関する詳細は次項をご覧ください。
遺伝子検査(核酸増幅検査)とは
核酸とは細胞の核内に存在する物質であり、DNA(デオキシリボ核酸)とRNA(リボ核酸)のことです。ヒトではDNAに遺伝子情報が保存されていますが、コロナウイルスはDNAを持たないRNAウイルスであるため、RNAを検出する必要があります。
ウイルスのごく微量なRNAを検出するためには、そのRNAを複製して検出可能な量まで増幅させることが必要です。
その増幅方法と検出方法の違いにより、複数の核酸増幅検査が存在しています。
(関連リンク)
遺伝子検査(核酸増幅検査)の種類
1.RT-PCR法
PCR法はもっとも古い核酸増幅検査です。1983年に米国でカリー・マリス(Kary Mullis)が発見した検査方法であり、1993年にノーベル化学賞を受賞されています(日本RNA学会、Roche社ウェブサイトを参照)。
PCR法はDNAを増幅する検査法であるため、コロナウイルスのRNAはそのままでは増幅することができません。そのためウイルスRNAをいったんDNAに変換する必要があります。この過程を逆転写反応(reverse transcription)といいます。逆転写反応により合成されたcDNAを増幅して測定する検査方法がRT-PCR(Reverse Transcription – Polymerase Chain Reaction)です。
新型コロナウイルス感染症の診断においては、2020年2月の感染初期から使用されていた検査法であり、「PCR検査」という用語が広まったのもRT-PCR法に由来します。
非常に感度が高い検査法ですが、RNAを逆転写させるまでの手技に熟練を要するため、RT-PCR検査に精通した臨床検査技師の存在が必要となります。また検査時間も長く患者さんに結果が届くまで1日以上かかることが多いです。
2.RT-PCR法(全自動式)
RT-PCR法の難しさや検査時間などを改善させるために開発されたのが、全自動式RT-PCR検査装置です。
検体採取後の逆転写反応からcDNA増幅までをすべて自動で行ってくれるため、検査を行うためのトレーニングが不要となります。また検査時間も従来のRT-PCR法より短縮化されており、約1時間程で結果が判明する機器も発売されています。
従来のRT-PCR法と比較して概ね同程度、あるいは僅かに劣る程度の感度と報告されていますが、厚生労働省が「新型コロナウイルスに対する核酸増幅検査」として認可しており、健康保険での取り扱いでは同一検査となります。
3.NEAR法(等温核酸増幅法)
PCR法はDNAを増幅する際に温度を上げて熱変性させる必要があるため検査に時間がかかります。一方NEAR法では、一定温度で逆転写反応およびDNA増幅反応が進むため、PCRのように高温設定を行う必要がなく、極めて短時間で検査を行うことが可能です。新型コロナウイルス感染が陽性の場合は5分、陰性の場合は13分で結果が判明します。
従来のRT-PCR法と比較して95%以上の一致率と報告されており、また厚生労働省が「新型コロナウイルスに対する核酸増幅検査」として認可しているため、健康保険上の取り扱いでは同一検査となります。
NEAR法による測定機器が今回当院にて導入したID NOWであり、米国アボット社により開発されました。2020年にはトランプ前大統領に高く評価され、全米の医療機関に配布され核酸増幅検査機器として稼働しているそうです。日本では2020年10月に正式認可されました。
4.LAMP法(等温核酸増幅法)
LAMP法もNEAR法と同じく、一定温度で反応が進むためRT-PCR法のように高温設定を行う必要がなく、短時間(15~60分)で検査施行可能です。日本の企業である栄研化学株式会社にて開発され、2020年3月に厚生労働省で正式認可されました。LAMP法によるウイルス遺伝子検査も健康保険上はRT-PCR法と同一の検査と定められています。
その他にもいくつかの核酸増幅検査法があります。詳細は下記リンクをご覧ください。
(関連リンク)
抗原検査について
新型コロナウイルス感染症の有無を調べる検査として、抗原検査キットによる定性検査があります。インフルエンザウイルス感染症を調べる迅速検査キットと同様の検査方法です。抗原検査は特殊な機器を必要としない簡便な検査方法であり、所要時間も短時間(15~30分)です。ただし発熱などの症状があって既に発症した方にしか使用できません。無症状の方ではウイルス検出率が低いことが判明しているためです。
そのため無症状の方では抗原検査は使用できず陰性証明には使用できません。
一般的に抗原検査キットはPCR検査よりも感度が低く、偽陽性や偽陰性の問題が指摘されています。
抗体検査について
新型コロナウイルス感染症に関しては、大きく分けて下記2種類の抗体検査があります。
・Nタンパク(ウイルス核酸内のタンパク)に対するIgG抗体(N)
・Sタンパク(ウイルス表面のスパイクタンパク)に対するIgG抗体(S)
新型コロナウイルスに罹患した場合、igG抗体(N)とIgG抗体(S)の両方が上昇します。
一方、新型コロナウイルスに罹患したことがなく新型コロナウイルスワクチンを接種した方の場合、IgG抗体(S)だけが上昇します(IgG抗体(N)は上昇しない)。
IgG抗体(S)はウイルス感染を防御する抗体、すなわち中和抗体と相関することが報告されています。
以上より、IgG抗体(S)を測定することで新型コロナワクチンの効果を測定することができます。
詳細は当院ブログにて解説しておりますのでご覧ください。
なお本検査は健康保険が適応されませんので自費診療となります。
当院では検査費用6,000円(税込み)にて自費診療を行っております。
詳細は下記バナーをクリックしてください。
(関連リンク)
–>