血管透視装置「ベインビュア」を導入

2015/11/01

ふくいわ耳鼻咽喉科クリニックでは、医療安全の質的向上を目指して、新型の医療機器を導入いたしました。

血管透視装置「ベインビュア」です。米国CHRISTIE社製で、スター・プロダクト株式会社が国内サポートを行っています。

以下、メーカーによる説明です。
「ベインビュアはパルスオキシメータと非常によく似た無害の近赤外線を使用しています。血液中のヘモグロビンがこの近赤外線を吸収することを利用し、照射範囲にある皮下１０mmまでの静脈・瘤・弁または薬剤の流れ、誤穿刺による血腫などの状態を皮膚上にリアルタイムにイメージ画像として投影します。ベインビュアは、今まで血管へのアクセスが困難だった症例や、リスクの高い薬剤投与時の血管外漏出事故回避に役立ちます。」

ようするに、この機器をかざすと血管が浮かび上がるので、採血・点滴時のトラブルを回避できるようになる、ということです。既に米国では2,000台以上が臨床の場で導入され、一般診療として普及しています。

商品パンフレット（ＰＤＦはこちら）。

ではなぜ、耳鼻咽喉科外来でベインビュアが必要とされるのでしょうか？

当院ではアレルギー性鼻炎の患者さんが多数ご来院されます。アレルギー性鼻炎の初期診断において「アレルギーの原因は何なのか？」を調べることは大変重要です。例えばハウスダストやダニ、あるいはスギ花粉など、自分のアレルギーの原因物質（アレルゲン）が特定されることで、今後の生活においてアレルゲンから身を守るような過ごし方が可能となります。アレルゲンを遠ざけることができれば、わざわざ薬物療法を行う必要もなくなるわけです。

その一方、ただアレルギー性鼻炎と診断されただけで、原因を特定せずに漫然と薬物療法を続けることは余り得策とは言えず、鼻アレルギー診療ガイドラインでも「アレルゲンを特定すること」の重要性が推奨されています。アレルゲンを調べるためにはいくつか方法がありますが、代表的な方法としては血液サンプルの分析（抗原特異的抗体価測定法）があります。具体的には「採血して検査センターで１週間かけて分析する」ことになります。

アレルギー専門医として鼻アレルギーを専門的に診療している当院では、専門医の義務として「アレルゲン検索の重要性」を全ての患者様にご説明しています。その中で、検査をご希望される方に対しては積極的に採血での検査を行っています。そのため、おのずと採血する機会が多くなっており、特にスギ花粉症シーズンともなりますと、１日に数十名の採血を行う場合もあります。

従来の採血方法は、皮下に埋まっている血管を医師・看護師の指の感覚で探り当て、そこをめがけて針を刺入する、というものになります。ただ幼少児のように腕がムチムチしていますと、時として血管を触れにくいこともあり、どうしてもうまく採血できないことが考えられます。

このような時にこそ、ベインビュアが真価を発揮致します。

当院の採血ブースにベインビュアを設置。ベインビュアから赤外線が投射されます。

採血時に腕へ投影することで、皮下血管が描出されます。

このように非常にくっきりと血管が浮かび上がります。

ベインビュア、このように医療安全の観点からは大変素晴らしい機器なのですが、強いて挙げるならば、なかなか高額であることが導入時のデメリットではあります。。。
認可された医療機器ですが保険点数の設定もないため、ベインビュアを使用しても金銭的収益はありません。。。
しかし多くの患者様に安全と安心を提供することを最優先に考え、今回導入を決定いたしました！！
今後臨床の場で大いに活躍してくれることを期待しています。

実際に使用している動画（CHRISTIE社提供）。