重症スギ花粉症に対する抗体療法「ゾレア」

スギ花粉症でお悩みの方、特に飲み薬の治療を受けていても症状が強い方に、新しい抗体療法「ゾレア」

スギ花粉症でお悩みの方、特に飲み薬の治療を受けていても症状が強い方に、新しい治療法のご案内です。

2020年より、重症・最重症のスギ花粉症に対して「抗体療法」が開始されています。
この治療薬は「抗IgE抗体オマリズマブ(ゾレア®)」という注射薬であり、2~4週間に1回、皮下注射する治療法です。

【対象となる方】

  • スギ花粉症によるくしゃみ・鼻みず・鼻づまりがひどくて、抗ヒスタミン薬などの内服薬でも症状が治まらず頭痛や集中力低下でお悩みの方
  • 抗ヒスタミン薬の眠気が強くて勉強や仕事に支障が出る方
  • これまでスギ花粉症の治療が上手くいかなくてお悩みの方

特に大切な試験を控えた受験生にはお勧めの治療法です

ゾレアとは

ゾレアはスギ花粉症の症状を引き起こすIgE抗体に作用して、アレルギー反応自体を抑える注射薬です。

2009年に喘息治療薬として発売され良好な治療成績を収めており、2020年からスギ花粉症に対する適応が承認されました。

体重と血中総IgE濃度によって投与量、投与回数(2週間毎あるいは4週間毎)が決まります。

【ゾレアを使用するための条件】

  • 重症又は最重症のスギ花粉症
  • スギ花粉症のアレルギー検査(血液検査)でスギ特異的IgE抗体がクラス3以上
  • スギ花粉症の治療(抗ヒスタミン薬など)を1週間以上行っても効果不十分であった方
  • 12歳以上で、血中総IgE濃度が30~1,500IU/mL、体重が20~150kgの範囲にある

ゾレアの治療メカニズム

  1. スギ花粉症患者さんの鼻粘膜にスギ花粉が付着すると、免疫細胞がスギ花粉をウイルス・細菌のような「外敵」と判断して攻撃を開始します。
    一方、スギ花粉症を発症していない患者さんでは、スギ花粉が鼻粘膜に付着しても免疫細胞は「無視」するため攻撃は起きません。
  2. 攻撃に使用される武器は「スギ花粉特異的IgE抗体」というタンパク質で、IgE抗体は「マスト細胞」という免疫細胞と結合します。
  3. 「スギ花粉特異的IgE抗体が結合したマスト細胞」にスギ花粉が結合すると、マスト細胞が刺激されて「ヒスタミン」「ロイコトリエン」などの化学物質が放出されます。ヒスタミンはくしゃみ発作、鼻水を引き起こし、ロイコトリエンは鼻詰まりの原因となります。
  4. ゾレアは抗ヒトIgEモノクローナル抗体という生物学的製剤(抗体製剤)であり、ヒトのIgE抗体に結合することでIgE抗体とマスト細胞との結合をブロックする働きがあります。ゾレアによりIgE抗体がブロックされると、スギ花粉が鼻粘膜に付着してもマスト細胞は「無視」するため、「ヒスタミン」「ロイコトリエン」などの化学物質は放出されません。
  5. 以上より、スギ花粉症の患者さんがゾレアを注射すると「スギ花粉を吸いこんでもスギ花粉症の症状が起きなくなる」ことが期待されます。
    ただし実際には100%効果が保証されるわけではないのでご了承ください。

ゾレアの投与スケジュール

ゾレアを正しく使用するためには、まずしっかりした診断を行ってその適応があるか十分に見極める必要があります。そのため実際の治療までに下記のような受診スケジュールが必要となります。

  • 1回目の受診
    ・重症花粉症の診断を確定する
    ・血液検査で総IgE検査、スギ特異的IgE抗体検査(これまで未施行の場合)を行う
    ・抗ヒスタミン薬、ステロイド点鼻薬による治療を開始する
  • 2回目の受診
    ・既存の治療薬で効果が不十分なスギ花粉症であることを診断する
    ・血液検査の結果にてゾレアの投与量・投与間隔・自己負担額を決定する
    ゾレア投与日を予約する(治療同意書の取得)
  • 3回目の受診
    ゾレアを皮下注射にて投与する
    ・抗ヒスタミン薬の併用が必須であるため処方する

このように正しい手順を踏んで治療を行う必要があるため、ご希望の方はお早めに受診をご検討ください。
受診の際はインターネット予約システムをどうぞご活用ください。待ち時間を院内で過ごすことなく、ご自身のため有効にご利用いただけます。詳細は→こちら。

ゾレアの副作用

主な副作用は注射部位の反応です。皮膚が赤くなったり腫れたりかゆくなることがあります。

ごくまれにアナフィラキシー(血圧低下、呼吸困難など)を起こす危険性があります。国内の臨床試験ではアナフィラキシーは報告されていませんが、気管支喘息患者を対象とした海外臨床試験において報告されており、発現頻度は成人で0.1%(7例/5,367 例)、小児で0.2%(1例/624例)でした。

季節性アレルギー性鼻炎の国内第三相試験161名では、アナフィラキシーは認めていないとのことです。

ゾレアの薬剤費

ゾレアの治療効果は既存の治療と異なり大変良好であることがわかっていますが、生物学的製剤の製造には多額のコストがかかるため、非常に高額な薬剤です(150mg一瓶で約29,000円)。

具体的な投与量は血清中IgE濃度と体重から決定されます。
例えば投与量が150mg、投与間隔が4週間毎と決まった場合、1カ月の薬剤費は8,744円(自己負担3割の場合)となります。

詳しい薬剤費については販売元のホームページをご覧ください。
ゾレアに関する詳細は→こちら
治療費シミュレーターは→こちら

医療費助成について

各市町村によって子供さんの医療費助成制度があります。下記に該当される方はゾレアの薬剤費が全額助成されます。

【対象となる年齢】

  • 南さつま市:18歳までの方。詳細は→こちら
  • 南九州市 :18歳までの方。詳細は→こちら
  • 枕崎市  :18歳までの方。詳細は→こちら
  • 日置市  :15歳までの方。詳細は→こちら
  • 鹿児島市 :15歳までの方。詳細は→こちら

(注意)上記は2024年1月現在の情報です。今後変更となる場合がありますので詳細は各自治体へお問い合わせください。

その他、高額療養費助成制度により医療費の一部が払い戻される場合があります。詳細は加入されている健康保険組合にお問い合わせください。

最後に(まとめ)

ゾレアは気管支喘息の治療において、既に高い治療効果と安全性が報告されています。
重症スギ花粉症での使用についても同様の結果が期待されますが、わずかながら副作用のリスクがあること、医療費の自己負担額が高額となることなど、注意すべき点もいくつかあります。
治療の必要性とリスクを十分ご理解いただいた上で、治療のご意志を検討していただきたいと思います。

当院では日本アレルギー学会認定アレルギー専門医として、舌下免疫療法、日帰りレーザー手術、花粉飛散開始前からの初期療法などスギ花粉症に対する専門的医療を行っております。ゾレアによる新しい抗体療法にも積極的に取り組み、患者さんのニーズに最も適したオーダーメイドな医療を目指しています。
さらには地域におけるアレルギー診療の発展に少しでも貢献できることを願っております。

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