地方部会で講演してきました
ふくいわ耳鼻咽喉科クリニックでは、以前から告知しておりました通り、1月14日(土)午後の診療を1時間早く切り上げさせていただきました。
当院ご利用の皆様にはご迷惑をおかけして申し訳ございませんでしたが、同日夜、鹿児島県医師会館にて「鹿児島大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室同門会・日耳鼻鹿児島県地方部会・合同学術講演会」が開催され、その一般講演で院長が講演したためです。
演題は「声帯麻痺症例における画像診断の有効性」というものです。
嗄声(かすれごえ)を訴えて来院された際、片方の声帯が動かず麻痺していた場合、片側声帯麻痺という診断になります。
声帯麻痺の原因を調べるためにいくつか検査を行うのですが、それぞれの検査でどれくらい原因となる病気が判明したのかを分析し、どんな検査が有効であったかを考察する、という臨床研究です。
さらに他施設の報告を文献にて検索し、当院の検査成績と比較してみました。
当院では、(1)電子内視鏡による声帯運動の観察、(2)頸部エコーによる甲状腺・頸部リンパ節の診断、(3)マルチスライスCTによる胸部CT検査、という3つの診断機器を完備しています。これらを駆使して、声帯麻痺の原因を調べているのです。
当院で見つかった「麻痺の原因疾患」としては、胸部大動脈瘤が最も多く、次に肺癌、甲状腺癌、そして食道癌と悪性腫瘍が続きます。
特に胸部大動脈瘤に関しては、当院を受診した片側声帯麻痺のうち21%を占めるという結果が判明しました。約5人に1人の割合で大動脈瘤が隠れていた、ということです。
このように、かすれ声(声帯麻痺)をきっかけに、耳鼻咽喉科領域以外の急を要する疾患が見つかった割合は54%(約2人に1人)という結果でした。
当院は耳鼻咽喉科クリニックとしては珍しく、全身型マルチスライスCTを完備しているのが特徴なのですが、声帯麻痺の初期診断で胸部CTを撮ることの重要性を再認識させられる結果を得ました。
さらに、開院当初からCTを導入したことで大動脈瘤や悪性腫瘍などの大事な疾患を早期診断できた、ということが本研究で明らかとなりました。
年末年始は声帯麻痺症例のデータ解析作業、さらに文献検索と各文献の内容解析など、本研究にかかわる仕事でとてもバタバタしていました。しかし一定のまとまったデータを得ることができて、さらに当院での検査プロトコルが妥当であることも判明し、学会発表も無事に終了することができました。ちょっと大変でしたが、今はとても充実した気分です。
ふくいわ耳鼻咽喉科クリニックでは、今後も当院での治療成績に関する各種臨床研究を重ねつつ、学会発表や論文執筆などで情報発信をし続けていきます。この努力こそ「たとえ小さな診療所でも医学の発展へ貢献できる」証しだと考えています。
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